なでしこJAPAN報道量
~2008年北京五輪と2011年ドイツW杯の比較~
■調査概要
アメリカとの劇的なPK戦を制し、見事世界の頂点に立ったなでしこJAPAN。大会期間中、日本全国が大きな盛り上がりを見せた。また決勝戦直後の月曜朝に号外が出されたことからも、なでしこが日本に与えた影響の大きさが分かる。帰国後もなでしこフィーバーは続き、なでしこリーグ観客動員記録更新、勝利ボーナス、国民栄誉賞受賞など、彼女たちの顔をテレビで見ない日はないといっても良いほどだ。9月1日から始まった五輪予選とともに、なでしこJAPANのメディアへの登場回数はますます増えていくだろう。
そこで本コラムではなでしこJAPANの報道量から、日本での女子サッカー人気や、成績と報道量の関係について、データを交えて考察していく。調査対象期間は、
a. 2011年ドイツW杯なでしこ初戦1週間前~決勝戦終了後6週間
(6月20日~8月28日、10週間)
b. 2008年北京五輪なでしこ初戦1週間前~決勝戦終了後6週間
(7月30日~10月7日、10週間)
である。北京五輪を比較対象として選んだ理由は、
1. オリンピックがW杯と並ぶスポーツのビッグイベントであること
2. なでしこJAPANが好成績を残した(4位)こと
である。
■調査結果
上のグラフはドイツW杯と北京五輪での、1週間ごとのなでしこJAPAN報道量である。まず目につくのが決勝戦翌日以降のなでしこフィーバーである。決勝戦直後の1週間で総報道量は60時間に迫り、番組数は200、出稿数は1500を超えた。その後1ヶ月以上に渡ってなでしこJAPANは国民栄誉賞受賞、なでしこリーグ観客動員記録更新、五輪予選スタートなどの話題を提供し続け、平均10時間程度の報道量をコンスタントに記録し続けている。帰国後の報道量は、本来報道されるべきW杯でのグループ予選時の報道量よりも多く、多少違和感のある数字ではある。しかし、PRという側面から考えると、帰国直後にビックイベントが続いたことはなでしこJAPANにとって非常にプラスに働いたと言えるだろう。アメリカとの劇的なPK戦を制し、見事世界の頂点に立ったなでしこJAPAN。大会期間中、日本全国が大きな盛り上がりを見せた。また決勝戦直後の月曜朝に号外が出されたことからも、なでしこが日本に与えた影響の大きさが分かる。帰国後もなでしこフィーバーは続き、なでしこリーグ観客動員記録更新、勝利ボーナス、国民栄誉賞受賞など、彼女たちの顔をテレビで見ない日はないといっても良いほどだ。9月1日から始まった五輪予選とともに、なでしこJAPANのメディアへの登場回数はますます増えていくだろう。
そこで本コラムではなでしこJAPANの報道量から、日本での女子サッカー人気や、成績と報道量の関係について、データを交えて考察していく。調査対象期間は、
a. 2011年ドイツW杯なでしこ初戦1週間前~決勝戦終了後6週間
(6月20日~8月28日、10週間)
b. 2008年北京五輪なでしこ初戦1週間前~決勝戦終了後6週間
(7月30日~10月7日、10週間)
である。北京五輪を比較対象として選んだ理由は、
1. オリンピックがW杯と並ぶスポーツのビッグイベントであること
2. なでしこJAPANが好成績を残した(4位)こと
である。
■調査結果
ではなでしこフィーバーはいつから始まったのだろうか。この点に注目すると、ドイツW杯準決勝以降で報道量が急激に高まったことがわかる。グループリーグ最終戦イングランド戦と準々決勝ドイツ戦が行われた週(③)と比べ、準決勝・決勝が行われた翌週(④)には5倍以上のなでしこ関連の報道量があった。つまりなでしこフィーバーが始まったのは、今まで一度も勝てなかったドイツを下し、準決勝でスウェーデンを破った時期ということになる。
この報道量増加の理由としては、「W杯決勝戦」というネームバリューの高さが考えられるだろう。それまではスポーツニュースでしか取り上げられていなかったなでしこJAPANの活躍が、「決勝進出」というニュースバリューによりその他一般のニュース番組、情報番組でも取り上げられたため、報道量を大幅に伸ばしたのではないだろうか。また①~③を見ると、北京オリンピックと比べ、ドイツW杯の予選リーグ報道量が極端に少なくなっている。つまり、女子W杯という大会そのものが開幕当初はまだそれほど認知されていなかった可能性がある。しかし勝ち進むうちに徐々に知名度を獲得していき、準決勝以降ようやく報道量という形になって表れたという見方もできる。
対照的に北京オリンピックはグループ初戦から比較的大きな報道量があり、ドイツW杯よりも当初の注目度は高かった。しかし準決勝でアメリカに敗れた日本は、続くドイツ戦でも勝利を逃してしまい、メダルなしの4位に終わった。ちなみに北京五輪前年に行われた2007年北京W杯では、なでしこJAPANはグループリーグで敗退している。この点を考慮すると、北京五輪のなでしこ4位入賞という成績は大躍進・大健闘といってよいだろう。しかし結果として、なでしこはオリンピックで火が付きかけた人気を大きくし、ブームを作り上げていくことができなかった。帰国直後にオールスターが行われ、その後の2週間もわずかな報道量があったものの、それ以降の調査期間中なでしこ関連の報道はなくなってしまった。
■勝利がすべてを変える
以上のデータから浮かび上がってくるのは、「優勝」と「4位入賞」でメディアでの扱いが大きく違ってくるという事実である。メディアに取り上げられる上で、メダルや優勝など見せることができる、「形」のあるものを持っていることの重要性が今回の調査で明らかになった。最近の例で言えば、2011年世界陸上では金メダルを取った室伏選手に注目が集まる一方、健闘したその他の日本人選手への報道量は少なめになっている。極端に言ってしまえば、プロ選手として生活できる選手/スポーツと、できない選手/スポーツの差とは才能や努力の差ではないのかもしれない。順位がひとつ違うだけでメディアでの取り上げられ方が大きく変わり、スポンサーシップなど選手の待遇を大きく左右してしまうという現状は、プロスポーツやその他アマチュア競技が発展していく上で、大きな弊害になっていると言えるだろう。
しかしながらなでしこJAPANは、アマチュア競技も結果を出すことで注目度が上がりメジャースポーツに発展すること、また選手自身への待遇を改善できることも証明して見せた。結果がすべてのスポーツの世界で、自らの価値を証明して見せたなでしこJAPAN。彼女たちは今後も結果を残し続け、メジャースポーツの座を守っていけるのだろうか。また現時点(9月6日)でロンドン五輪への出場権をほぼ手中に収めたなでしこJAPANを、今後メディアがどう取り扱っていくかにも注目していきたい。
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